10.やっぱり月の夜の話
月からサラサラと砂がこぼれ落ちる
小石が砕け散り流砂へと姿を変える
今日も一つの月夜の話が幕を開けた
月がいつからぽっかりとそこに浮かんでいたのか
誰も覚えてはいないし書き記されてもいない 月自身すら知ってはいないのだろう
昔の世界は太陽とたった一つの天秤だけだったという
幸せが砂のように細かい欠片となって大地を作った
反対側の皿に鎮座していたものは小さな塊になって空から大地を見ることにした
天秤自身は 二つに挟まれ無数の生き物へ姿を変えた
今日も多数の青白い顔をしたものが月へ向かって上っていく
そして黙って受け容れられ月の一部となる それが淡々と繰り返され続けていく
多くの不幸せと引き替えに人は同じくらいの幸せを手に入れてきた
ほんの少ししか大地を掴めない小さな手には乗りきれないほどの多くのものを
ランプもなく薄墨色に染められた部屋の中で
一人の女の子が月の砂で出来た砂時計を逆さまにした
貧しい家に生まれたその子のたった一つの宝物
星が沢山落ちてきた夜 一緒に落下してきて目を回していた欠片から作った砂時計
砂が淡く輝き始めるのと同時に 鐘が遠くで平穏な音を打ち響かせていた
今日も日が沈み月が出てくる
やっぱり、月夜は何も変わりなく訪れてきた