僕は、七月猫を探し出さなければならない。
 それだけは、あやふやな記憶の中ではっきりと覚えている。


「七月猫を知っているかい?」
「知らない」

 読みかけの本に栞を差しながら、彼女は答えた。

「教えてくれないか」
「嫌」

 本のタイトルは「六月猫」だった。

「私はそれを知る必要がないもの」

 彼女がほっそりとした指で髪を掻き上げると、風の声が耳朶をくすぐっていった。

「知らなければいけないのはあなただから」


 手すりの上に澄まし顔でうずくまる六月猫を見つけて、彼女はふらふらとバルコニーに出た。

「待って、君が居なければ僕は七月猫を見つけられない」
「嫌よ」

 六月猫は抱き上げられて、気持ちよさそうに体をすり寄せていた。

「私は六月猫と一緒にいるの、それだけでいいんだから」


 風になって彼女は行ってしまった。


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