日向ぼっこをしていると、不意に影がさした。
 目を開けると、太陽は大きな猪の腹に隠されたのだと分かった。

「君は、随分のんびりとしているんだね」

 猪はじろりと僕を見つめた。
 瞼には、目糞が目尻の方までこびりついていた。

「まるで、人間じゃないみたいだ」
「どういうこと?」
「だってほら――人間は、いつも生き急いでいるじゃないか。
 つまらないことばかりに気を遣って、それでいて時間を浪費していると気付いていない」
「好きなんだよ、そうやって生き急ぐ自分を、人間は」
「後悔はしないで?」
「後悔しないために、生き急いでいるんだ」

 猪は体を電気の走ったように震わせた。

「それで、後悔はしていないの?」
「多分していないさ」
「君は、自分勝手なんだね」

 縮こまらせた背中越しに、陽光が僕の網膜を焼いた。

「そう、自分勝手なんだ」

 そっと、僕は目を閉じた。

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