山道を歩いていると、中腹の辺りにホテルが見えた。
「ばいばい」
丁寧に挨拶をするドアマンを横目に見ながら、僕は扉を自分で開けて入った。
呼び鈴は壊れていたけれど、仮面を付けた男が出てきた。
「お泊まりですか、お客様」
「七月猫を探しているんですが」
「申し訳有りませんが、私どもには今のあなたにお教えすることは御座いません」
がっかりしている僕を見て、男は同情したように首を振った。
「お疲れでしたら、お部屋をご用意いたしますが」
「いえ結構です、もう少し歩きたいので」
お礼の意味を込めて呼び鈴と柱の出釘を直してから、外に出た。
「ばいばい」
やっぱりドアマンはそう挨拶をした。
続き 帰る