蜻蛉と黄牛


車内を飛び回る蜻蛉を
子どもが捕まえようと走り回る
鈍行列車の昼下がり

カタンカタンと軽やかに
レールの上を走り行く
羽を広げた蜻蛉の
二つ並んだ姿にも似た
赤錆びた道を進む姿は
でこぼこ道を歩む黄牛の姿にも見え
ゴトンゴトンと響かせつつ
のっそりのっそり動き行く

蜻蛉がひらり
舞い降りた先は
頬に陽を当てすやすやと
居眠りしている学生の
膝に置かれた鞄の上
にじり寄る
子どものてのひら
青い眼でじっと見つめて
掴まれるその刹那
またひらり

まっすぐ伸びた単線の
銀色額縁の向こうから
まっすぐ緑が降りきしる
川遊びの子等が手を振り
蝉時雨に包み込まれ
稲穂がそよと揺れ渡る
追い疲れ休む子の野球帽の上で
差し替えられ続ける紙芝居を見ながら
羽がゆらゆらまたゆらゆら
こっくりこっくり

旅を終え
見たこともあるようなあぜ道で
見知らぬ仲間と
戯れ始める夕間暮れ

 戻る