6.欠けている月の話

 河岸の細い細い野原を縫い 一筋の列が真っ直ぐに伸びている
 針のように細い三日月に導かれ 青白い顔をした者たちが気の遠くなるくらいゆっくりと進んでいく
 月は敢えて何も言わない
 薄荷の葉に乗る夜露が鋭く貫かれ細やかに震えていた

 向こうに見える山々の なだらかな稜線の中腹ほどには水色の雲がかかっていた
 雲は色々な形に姿を変え遊んでいたが やがて幾切れかを残し散らばり消えた

 栗色の髪を結い上げたうなじに光は細々と当たり まだ若く瑞々しい肌を照らし出していた
 少女は月を見上げてふと薄く笑う
 何もしてくれなかった月を嘲るような笑い方をした
 無気力な大人達もつられて天の機嫌を窺った
 無数の鈍色の温度を持たない瞳が一斉に突き刺さる
 月は敢えて何も言えない 残っていた雲が何かに形を変えようとして失敗していた

 無言の列が何処まで続くのか 与り知る者は誰も居ない
 蒼い月 白い月 そして見えない月
 ただ、月の天高く見下ろしていたときの話

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