7.月の転げ落ちた夜の話
光が雲に遮られると
月は雲の上に寝転がって休憩をする
薄曇りの夜に淡い光は地上を軽く撫で
――或る破れ硝子のところまで来て突然止まった
邪魔をしたのはピアノの曲
翳りのない淑やかな旋律が雲を剥ぎ取り夜空を舞い踊る
とうとう月は転げ落ちて
何処かへ消えていなくなってしまった
明くる朝男が窓を開けると
窓辺には小さな黄金の塊が置かれていた
男はすぐに妻を呼び 金塊を見せ 震える手で十字を切った
噂は紙上を賑わしたがすぐに消えた
ただ、曲と共に細々と語り継がれている昔話