9.月と夜汽車の話
夜行列車の車体に冷たい月の光がそっとさし渡される
小さな女の子がブラインドを開け 窓辺に置かれた蜜柑を凝視していた
ガタンゴトン、ガタガタゴトゴト
一袋つまむと大事そうに口へ持っていく
そうして全部食べ終わると、
女の子はじっと月を見てから窓を閉めた
カタカタガタガタ、ゴンゴンゴトンゴン
白い吐息を浴びて雪原は妖しげな輝きを帯び始める
だがすぐに長いトンネルへ入り 月の光は届かなくなった
いつからか置き去りにされた汽車 幽霊が出るという噂も立てられた
今でもその日になると そこには花束が手向けられている
ただ、昔々の月と列車の思い出語り