「七月猫を知っているかね?」
今探しているところなのです、と答えると、山羊頭の紳士は口元を歪ませた。
「私は、今までに三月猫と五月猫を見てきました」
山羊の臭い息を浴びないように気を付けながら、僕は尋ねた。
「三月猫や五月猫を見たことがあるのですか?」
「勿論ありますとも。高慢な三月猫と話をしたのは、三百年ほど前のことです。
物静かな五月猫は、ほんの三十年前に見かけました」
「僕は、六月猫しか見たことがありません」
言うなり、山羊は不満げに鼻を鳴らした。
「何たることだ」
そしてもう一度焼け付くような息を噴き出した。
「まったく何たることだ、この私でさえ今まで見かけたことのない六月猫を、
お前のような小僧が知っていようとは!」
「いえ、あなたは二匹も見ている。ですが僕は、一匹しか見れていない」
「そうかも知れない」
山羊はなお不満そうにしながらも、満足した様子だった。
「あなたのような卑小な存在が、私と同じ立場に立てるわけがないのだ」
もう一度鼻息を鳴らし、山羊は去った。
僕は一つ溜息をつき、反対の方向に歩き出した。
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