智と何気ないことを語っていると、池に細波が起こった。
 瞬く間に、小さな白蛇が水中から現れた。

「月の名を持つ猫の匂いがするぞ、お前は誰だ」
「この方は七月猫の守護を受けた人間ですよ」

 白蛇には目がないらしい。鼻をひくつかせ、牙を剥いた。

「人間? 人間が、何故この世界にいる」
「彼は特別なんです」

 遠くで、地響きがした。
 智がそっと耳打ちして、
 あれはこの白蛇の本体が寝返りを打った音なんです、と教えてくれた。
 一つのことを理解するのに時間が掛かるから、苛立ち紛れに寝返りを打ったんです。

「そうか、分かったぞ」

 もう一つ寝返りを打ったのか、松の木が地面から揺さぶられた。

「時は止まっているのだな」
「そうです」
「それでは、儂はもう一眠りすることにする」

 白蛇が池に戻ると、智も一緒に消えた。

 一人取り残されてから、石を池に投げ込んでみた。
 三段跳ねてぽちゃんと沈んだけど、何も起きなかった。

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