小さな池を覗き込んでいると、自分の顔がぐにゃりと歪んだ。
手の平に乗りそうなくらい小さな羽の生えた犬が、そこから現れてきた。
「こんにちは、七月猫の守護を受ける人」
「七月猫を知っているのですか?」
「あなたから七月猫の匂いがしたものでね、見当を付けただけです」
「僕は七月猫に会ったことはない」
顔を近付けてみると、犬はにこにこと笑っていた。
「それはそうでしょう、月の名を持つ猫は一つの場所に留まらない」
犬は僕の肩まで飛んでくると、ちょこんと座った。
「でも、彼女は六月猫と一緒にいた」
「それは当然ですよ」
犬は僕の肩に座ったまま、動くつもりはないらしい。
尻尾を振りながら、お天道様を見上げていた。
心地良い無言の時間が、分からないくらい流れた。
「またご縁がありましたら続きのお話をしましょうか」
声を掛ける間もなく、犬は消えてしまった。
その後は何度呼んでも出てこなかったので、僕も畔を立ち去った。
続き 帰る