「七月猫は、何処にもいないさ」

 大烏は、羽を広げながら僕に告げた。

「あるのは欠片だけさ。月の名を持つ猫達は、時間に間に合わなかった。
 六月猫だけで止められ続けるわけはない。いつも時間は揺らいでいる、それが証拠さ」

 七月猫に会ったことを教えると、大烏は嘴を天頂にさし向けた。

「今まで、こんな事はなかった。
 何で六月猫は一人だけで蓋を閉めることを急いだのか、分からないさ」
「蓋?」
「魂の蓋さ」

 嘴の端から生暖かい息を吹き漏らすと、大烏は急に上昇を始めた。
 振り落とされないよう、僕も翼に絡み付いた。
 駆け抜けた後、色の薄い世界に出た。

「でもきっと、六月猫は後悔していないと思う」

 大烏も僕の言葉にしっかりと頷き、甲高い声でかぁと鳴いた。

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