彼女は泣いていた。
いつも笑っていた顔をボロボロに歪ませて、僕をなじっていた。
僕にはどうすることも出来なかった。
彼女の立ち去った後も、僕は追い掛けられずにいた。
「それで、あなたはどうしたのですか?」
「勿論、何もすることなくそのまま……」
満足しているのかしていないのか、仮面の男はポットを取りだした。
紅茶の注がれる音は、フロア全体に静かに響いていた。
「知っていて聞いているんですか?」
「答えを、あなたはもう見付けていると思いますよ」
紅茶の香りは、少し焦げ臭さを交えていたけど、甘かった。
今まで忘れていたことを、思い出したような気がした。
彼女は、一度も笑っていない。
怒り、哀しみ、そして静かに泣く。
じっとカップを見つめていると、ほんの少しだけ波が立っていた。
唇を触れさせると、波はゆっくりと吸い寄せられた。
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