木陰で休んでいると、天から林檎が降ってきて、すぐ横でぽとんと弾んだ。

「甘いわよ」

 高い高い枝の上に、彼女が腰掛けていた。
 六月猫は背中をさすられながら、膝の上で眠っていた。

「捕まえようとしても無駄。幹は出っ張りが少なくて登れないし、
 あなたは飛ぶことも浮き上がることもできない」

 その通りと言うしかないので、僕は彼女を見上げたまま、林檎を口に含んだ。
 シャーベットのように冷たくて、蜜のように甘かった。

「ねぇ……」
「嫌」

 僕の心を見透かしたように、彼女は林檎の芯を投げて寄越した。

「私はずっとここにいるの」

 芯は見る見るうちに大きくなり、彼女の高さくらいまでの木になった。
 そこに生えた実を、彼女は一つもぎ取り、口に含んだ。
 小さな可愛らしい唇が、林檎を少し、しゃり、と囓った。

「あなたはこの世界が嫌いなの?」
「そういう問題じゃないよ」
「早く七月猫を見つけられると良いわね」

 また、彼女は風となって飛び去ってしまった。
 六月猫も一声鳴いて、彼女の後を追い掛けていった。

 続き 帰る