嵐の明けた日の夜、僕はまだホテルにいた。
窓から外を見上げていると、蒼白く輝くものが見えた。
目を凝らすと、小さな欠片のようなものだと分かった。
「あれは月ですよ。七月猫が側にいるから、彼の欠片だけを目にできているんです」
ゆっくり振り向いた。
先ず、紅い瞳が闇に慣れていた網膜を焼き付けた。
その背中に、智は立っていた。
「沢山のことを知ったみたいだね、それで良いんだ」
七月猫は智を乗せたまま、悠然と僕に歩み寄っていた。
逆に智の尻尾は、釣り糸のように垂れ下がっていた。
「知っていますよね、あなたが死んでいることは」
「ええ」
思ってもいないことに、僕は微かに声を震わせた。
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