藍色の傘の骨は、真っ二つに折れていた。

「どうしようかな」

 彼女のくれた傘を一度二度と振ってみて、僕は先端を川の流れに浸した。
 傘から、軽い重みが伝わってきた。
 自分の手を浸しているように、僕はじっと川面を見つめた。

「何をしてるの?」

 突然肩を叩かれて、僕は傘から手を離してしまった。
 僕と彼女は、傘が流れ去っていってから顔を見合わせた。

「ごめん、君から貰った傘なのに無くしちゃった」
「そんなこと、良いわよ」

 六月猫は彼女に抱かれながら眠っていた。

「寝てるの?」
「そうね、六月猫は眠るのが好きなのよ」
「七月猫はどうなんだろう」
「知らないわよ」

 彼女は、怒ったらしく顔を背けた。
 少し膨らまされた頬は子どものようで可愛らしかった。

「そんなに七月猫のことが気になるなら、早く見付けなさいよ」

 一人になって、僕は苦笑して立ち上がった。
 見つからないかも知れないと思いながら、傘を探しに川を下っていった。


 続き 帰る